活用事例

  • ユーザーの行動の裏にある真実から仮説を導く

    ~対象者も意識していない「気づき」の発掘~
    集合写真

    (右から)フジッコ株式会社 入道知生氏、弊社営業部長 加藤、営業担当 石田

    フジッコ株式会社
    コア事業本部 ヨーグルト・デザート事業部長 入道知生 氏

    1960年に昆布事業からスタートし、惣菜、豆製品、そしてデザート製品と事業を拡大してきたフジッコ株式会社。その中にあって、毎年伸長し続けるロングセラー「カスピ海ヨーグルト」等を展開するヨーグルト・デザート事業部長の入道知生氏は、昨年から(株)リサーチ・アンド・イノベーションの「買いログTalk」(購買履歴から対象者を選定できるオンラインインタビュー)の利用を開始しました。どんな狙いでこのサービスを導入し、何に活用しているのか。
    お話を伺いました。

    ――貴社の事業概要とヨーグルト・デザート事業部について、お話しいただけますか?

    もともとは昆布と豆の会社で、富士昆布という社名でした。
    日本一の食品メーカーを目指すということで「富士」昆布でスタートし、とろろ昆布から始まって、佃煮、そして「おまめさん」へ。色んなカテゴリーに広がる中で乾物以外の売り上げが全体の50%を超えた時に、惣菜やデザートなど乾物以外への展開を考えて、メインブランドである「フジッコ」へ社名を変更しました。
    1990年代後半からは「おかず畑」に代表されるおかず事業を展開しました。「しば漬け食べたい」のCMで漬け物商品が大ヒットしました。さらにデザートも始めてナタデココのブームを経験し、当時大きな売り上げになりました。そして、2002年頃からは「カスピ海ヨーグルト」の開発をスタートしました。実はナタデココも発酵物なのです。ナタ菌という菌ですが、色々と菌を扱っているよねということで、乳酸菌も対象になっていきました。
    私たちはヨーグルト・デザート事業部なので、「カスピ海ヨーグルト」をどうするかがメインのテーマ。そして、ナタデココブームが終わった後に立ち上げた「フルーツセラピー」もあります。豆も昆布も年末年始の商品だったので、夏場での需要創造のためにデザートを検討したのが始まりですが、「フルーツセラピー」はナタデココを活かしたゼリーです。
    おかげさまで「カスピ海ヨーグルト」は発売以来、順調に前年売上をクリアし続けています。今は、クレモリス菌を使った応用商品として、元々の種菌自体と完成品のヨーグルトを展開していて、この数年は大豆ヨーグルトなどの事業拡大を進めています。

    商品画像

    ヨーグルト・デザート事業部の商品群(一部)

    ――2022年春から年間を通じて「買いログTalk」をフジッコ様にお使いいただいています。「買いログTalk」を使おうとしたきっかけは何ですか。

    今までの調査は「どういう購買をしていますか?」という事前調査で対象者を選んで本調査に入りますが、かなりの確率で当てが外れますね。聴いていくにつれて事前調査と違うことが分かってくる(笑)
    私の感覚だと半分くらいの確率で、ヘビーユーザーだと思っていたものが違う結果だったりします。モヤモヤしたまま調査費用ばかりがかかっていく。そこを何とかしたいと思っていました。
    御社から購買履歴に基づいてインタビュー対象者を絞れるという話をお聞きして、これなら問題が解決できるかな、狙った人に会えるかな、という期待をもってスタートしました。
    もう一つは離脱ユーザーですね。これは普通の調査だと見つけるのがすごく難しい。「半年前に買いましたか?」「何カ月前に買いましたか?」と聴いても覚えていない。
    実際に購買したけど一回しか買わなかった人を購買履歴から見つけて、その人に何が起こっているのか聴いて真実をつかめると打ち手を改善できる余地があります。「買いログTalk」はそれができるのがポイントですね。

    ――御社ではモデレーターや発言録作成も自社内で完結するという事をしていただいています。購買者に自ら直接お話を聴く事で、どんな良い事がありましたか?

    まず、狙ったユーザーにかなりフィットしています。ヘビーユーザー・離脱者・ライトユーザー、ほぼターゲットに当たっているところが実感できますね。
    もう一つは、複数名がオンラインでインタビューに立ち合えるので、技術系の担当も何人か同席しているんですね。彼らも疑問に思った事をモデレーターにチャットして質問したりして。
    企画担当も技術者も一緒に集中的に話を聴くという接点を持つことによって、技術者の思考が企画担当側に寄ってくる。「ああいうお客さまに食べてもらうのはこういうのが必要だよね」といった意見が出てくる。インタビュー終了後のディスカッションも皆でやりますが、企画担当よりもむしろ企画的な視点で技術者が語り出したり。そういう事があると技術者と企画担当がすごく連動しやすくなるんですよね。
    これがもし、時間的に長すぎると技術系担当の負担になりますが、1時間くらい聴く程度なら調整ができる。終了後、さらに1時間程度の意見合わせをすれば大体イメージが整ってきます。
    企画担当のレベルアップと、技術者の企画寄りの思考の育成という意味で、ちょうどいいパッケージなのかなと感じますね。

    フジッコ株式会社 入道知生氏

    フジッコ株式会社 入道知生氏

    ――買いログTalkを1年間、実際に使ってみてのご感想はいかがでしょうか。

    一般的には、このサービスは「購入履歴が押さえられるオンラインインタビュー調査で、ターゲットに当たりやすいよね」と捉える人が多いでしょうね。
    ですが、私はちょっと違う感じで見ています。
    対象者がどういう行動をしているかを中心に調査していて、単純な感想はあまり求めないようにしています。行動の理由や背景を、購買履歴を押さえながら質問すると、かなり的確に、どの商品を買ってどれぐらいの頻度で買い回ってどういう食べ方して・・・みたいなことがリアルに浮かび上がります。
    そうなると、そのお客さまの気持ちではなく、行動の裏にどういう思いがあるかの仮説が作れるんですよ。仮説ができると、私たちは仮説に対するアンサーを用意しようとする。
    つまり、なんでそんな行動してるんだろう?という疑問を持てるように、ひたすら購買履歴データの脇にある事実を固めて仮説出しをする。そんな使い方です。データをある程度押さえていると対象者の行動を捉えられるメリットがありますね。行動から仮説を出せますし、仮説を出す行為は、慣れてくると非常にスムーズにできます。数多くの仮説を出せる点がこのサービスの最大の特徴だと思いますね。

    ――企画担当の方も、技術担当の方も、買いログTalkをやった事で出せる仮説が実際に増えた、あるいはこんな良い仮説が出せた、といった事はありましたか?

    複数あります。
    例えば一番簡単なことで言うと、ヨーグルトって一個のブランドだけ買ってるわけではなく、色々食べてるんですよね。さらに 色々話を聴くと、納豆も食べていますとか、漬物も食べていて、色々な菌を摂っていると安心で、一個に特化しない方が安全だろう、と。
    なんで皆こんな事するんでしょう? 一個でいいし、美味しい好きなヨーグルトを毎日食べたらいいんじゃないか、と(笑) でもそういう仮説ができて、次のインタビューで「もしかしてこういう事ですか?」と確認すると、対象者本人は意識していなかったかもしれないけど、言われてみるとそうですね、となる。
    菌に対して、今までは美味しさや健康効果という事に特化して考えていたのが、菌を複数摂る事によって、ブレンドする事によって、安心感がうまれてくる。何が特別効いているかよく分からないけど、良い生活してるんだよ、という安心感に繋がるという具合に。そうなると、メーカーとしてもアプローチが全然変わりますね。本当にヨーグルト一個だけの話していていいの?となります。
    こういう発想は、商品とその周りだけを見ていると何も分からないですけど、俯瞰すると見えてきます。

    ――御社は元々色々な菌を取り扱っていたというお話が最初にありましたが、その強みとも繋げられそうですね。

    そうです。そんな生活スタイルをどう提案するの?と。
    そもそもヨーグルト単体の訴求で良いのか? 1個のヨーグルトの中でいっぱい菌を摂れるのが良いのか。いや、もっと生活全体で菌を上手く取り入れることをプロデュースするのか・・・など、考える事が変わってきます。

    フジッコ株式会社 入道知生氏

    フジッコ株式会社 入道知生氏

    ――買いログTalkへの要望や注文がありましたら、忌憚ない意見をお聞かせください。

    先ほども言ったように、購買履歴である程度お客様の実態を掴んでからその周辺を明確にする、輪郭を明確にする作業なので、購買履歴の見方のノウハウがもっと蓄積されると良いですね。直接競合だけを見れば良いのか、間接競合も見るべきなのか、など。
    例えばバスケット分析で、「カスピ海ヨーグルト」が買われているときに入ってる物と、「カスピ海ヨーグルト」が買われてないときに入ってる物と、どう違うの?といったことが事前にディスカッションできて、もしかしたらこの商品が置き換わってるかもしれないという仮説を持ちながら、それはなぜ?どういう行動なの?と確認できると、多分もっと仮説の数が増えてくると思います。
    ヨーグルトはヨーグルトと戦っていることが多いですが、例えばゼリーはゼリーだけが競合ではなく、プリンと戦っているかもしれない。そういう筋が購買履歴から想定できると、もっと綺麗な輪郭が出てくるような気がします。そのあたりのサービスレベルがどんどん上がってくれると非常にありがたい。かつ安価で(笑)

    ――今春からも継続して買いログTalkを使っていただける事になりました。今年度の新しい取組みに何を期待していますか。

    新たな取組みでは買いログTalkのグループインタビューも予定しています。
    グループインタビューも通常手法では、ヘビーユーザーと思って集めたのにヘビーではない人が結構バラバラ入ってくる。声の大きな人に引っ張られる状況もよくあります。
    これが、買いログTalkで本当のヘビーユーザーばかり集まった時にはどうなるか。ちょっと違う展開になるかもしれませんね。離脱者ばかり確実に集めたときにも、たとえば離脱理由を深くディスカッションして、同じグループの誰かの発言で「そういえばそういう事で私も買わなかったのかもしれない」と、表面的でない深い気づきが生まれるとか。
    1on1のインタビューで行動を捉えるのと、グループインタビューはちょっと違うイメージで捉えています。同じ購買状況の人達が集まることで、対象者自身が気づいてなかった事に気づけるケースが増えるといいなと思っています。


    2023年3月、フジッコ株式会社 東京FFセンターにて